移転価格調査の指摘事項について

海外子会社との取引(移転価格税制)

弊社は日本に所在する連結売上高1500億円のメーカーで、A国に所在する100%製造子会社S社を含め海外子会社15社を有しています。
この度、日本の国税局の調査官(以下「調査官」)から移転価格調査を含む法人税調査の連絡が弊社にありました。弊社は移転価格調査を受けることがはじめてのため、非常に不安です。移転価格調査において調査官は一般的にどのような指摘を行うのでしょうか。

メーカー

調査官の指摘事項は貴社と海外子会社との取引内容によりますが、例えば海外製造子会社S社の営業利益率が高い場合には、次のような指摘が想定されます。
まず、調査官には「海外製造子会社S社の営業利益率が高い原因は、自らの機能によるものではなく、本来、貴社の得るべき所得が海外製造子会社S社に移転しているためではないか」という視点を持つ調査官がいる可能性があります。

次に調査官は所得が移転する手段や要因を貴社へのインタビューや貴社から収集した資料により分析を行います。例えば貴社が有する技術を海外製造子会社S社に安価に使用させている場合は海外製造子会社の営業利益率が相対的に高くなります。そのため貴社の技術が優れていることを示せる要因を探し、「貴社の技術は超過収益を生み出す価値ある技術である。」と貴社に指摘することが想定されます。
この指摘の根底には、いわゆる「失われた30年」以前の技術立国であった我が国のメーカーを想定し、「超過収益を生み出す機能は貴社の研究開発機能のみ」という認識が調査官にあるからかもしれません。
また、従来の移転価格調査は2年、3年かけて、じっくり事実や情報を収集し、日本から海外への所得移転を認定していました。最近はマスターファイル、ローカルファイル、国別報告事項という、企業から国税局への情報提供制度により、かつてより短期間で移転価格調査を終結する傾向になっています。そのためか、調査官は所得移転の認定を行う前に、日本から海外への所得移転の可能性を企業に示唆し、修正申告書提出の意向を貴社に確認し、より短期間で調査を終結するケースも見受けられます。
貴社の移転価格調査においても、調査官から上記のような指摘や示唆があるかもしれず、貴社の不安は増したかもしれません。その場合、まずは移転価格調査の経験が豊富な専門家に相談することをおすすめいたします。

弊法人は我が国の移転価格税制導入時における調査経験がある国税局出身者(元調査官)を含む移転価格税制対応の専門家集団です。移転価格税制導入時の我が国の調査官は「日本親会社と海外子会社との取引が独立企業間にある企業の間で行われた場合、どのような価格で取引を行うのか」という移転価格税制本来の視点で企業と何度も議論を重ねながら調査を行ってました。そのため、弊法人にご相談いただければ、移転価格税制導入時の経験を踏まえた、課税側または納税者側のいずれにも偏らない公正なアドバイスを受け、税務調査に備えることができます。
ご相談事項がありましたら、ぜひ問い合わせフォームよりお問い合わせください。

回答者:清水達也